シミュレーションとフィールドワークで考える里山の未来


生態系モデルSEIB-DGVMによる森林シミュレーション

人間が生活していくために欠かせない「生態系からの恵み」には、様々なものがあります。すぐにお金に換算できる価値(食料や材木などの生産)も、もちろんありますが、それだけではなく、長くて広い視点で見たときに、人々にくらしに非常に役立つ、治水・生物多様性の保護・炭素の蓄積・教育・娯楽などの価値も忘れてはなりません。

近年、このような生態系から得られるさまざまな価値を総合して「生態系サービス」と呼ぶようになり、この概念を用いた生態系の総合的な理解を進めようとする動きがあります。生態系の価値を総合的に認識することにより、「森の木を切って売ればいくらになる」という単純な考えから進歩して、将来も末永く生態系の恵みを受けようとする考え方に関心が寄せられるようになってきました。

氷ノ山山系での植生調査

しかし、生態系サービスは、その多様さゆえに定量的・総合的な価値判断が遅れており、市民や政府が正しい判断を下すための材料としての価値は決して高くありませんでした。そこで、シミュレーション学研究科では、コンピュータシミュレーションを用い、客観的・総合的な森林生態系サービスの評価を行うための研究を行っています。シミュレーションにより森林生態系の基本的なはたらきや、存在する生物の多様性を推定し、これを用いて生態系サービスを定量的に評価しています。さらに、シミュレーション結果の正確さを確かめるためのフィールドワークも実施しています。兵庫県内では六甲山系や氷ノ山山系、さらに徳島県上勝町の高丸山サイトなどで、里山を構成する樹木の種類や大きさを測定し、それをもとにシミュレーションを構築・改良することで、50年後、100年後の里山の姿を予測し、地元の人々の豊かな暮らしにどのように貢献するか、具体的に示します。