公立大学法人 兵庫県立大学大学院シミュレーション学研究科

島研究室
Shima Laboratory

雲のモデリングと非線形動力学

シミュレーションにより未来を予測するのに確固たる方法論がある訳ではありません.  特に, 要素還元的な手法の適用が困難な, 人間社会や生命現象といった複雑な系の未来予測はいまだ難しいです. 複雑系の未来予測に向け, モデリング方法, 計算手法, 観測データの扱いなど, 総合的な視点から研究を進めています.

研究分野: 非線形科学, 複雑系, 計算科学, 雲解像モデル, 超水滴法, 結合振動子系, 連結階層シミュレーション, データ同化
E-mail: , Tel/FAX: 078-303-1995


研究紹介

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経歴・業績


研究紹介

1.超水滴法に基づく高精度気象モデルの研究開発
現在の天気予報や気候変動の予測には大きな不確実性が伴いますが, シミュレーションモデル自体の信頼性が低いことがその1つの要因になっています. 私達は「超水滴法 (Super-Droplet Method)」という独自の方法により, 世界最先端の精密気象シミュレーションモデルの開発を行っています. このモデルを例えば集中豪雨のメカニズムの解明に役立てたいと考えています. また, この技術を火山噴煙やエンジン, 惑星形成などのシミュレーションにも応用しようと考えています.

洋上の積雲から雨が降る様子. 画像をクリックすることで動画を見ることができます.

 


雄大積雲のVR動画 (共同研究者である松嶋俊樹博士(R-CCS)が作成)


2.同期現象
リズムを刻む素子が相互作用することで自発的に同期し, 集団としてマクロなリズムを生み出す現象を同期現象・リズム現象と呼びます. 例えば, メトロノームといった機械的なものから, 心臓の細胞, 体内時計 (概日リズム), 拍手, 蛍の発光, カエルの鳴き声といった生物的なものまで, 様々なものが同期することが知られています.

擬似ホタルの集団発光シミュレーション


3.連結階層シミュレーション
物理法則には階層性があり,  ミクロな領域とマクロな領域が現象の中に共存することがあります.  この特徴を利用し, 注目する現象のマクロの振舞いを効率良く, かつ, 精密に数値計算しようというのが, 連結階層シミュレーションと言う方法論の発想です.

2 つの位相特異点の引力的相互作用の連結階層シミュレーション. (a) は原理計算の結果. (b) と(c) は連結階層シミュレーションの結果で, (b) に表示された領域のうち, (c) の赤い領域に対応する領域がミクロ領域です.


4.社会・産業・環境のシミュレーションにおけるデータ同化の開拓的研究
データ同化とは, 不確かさを伴うシミュレーションと観測を融合し, そこからより確かな情報を抽出する統計学的枠組みです. 社会・産業・環境に関する複雑な現象のシミュレーションにデータ同化を応用する研究を行っています.

粒子フィルタによるRosslerモデルの状態推定


指導学生の研究テーマ
・金星の雲の共凝結成長ダイナミクスにおける分岐構造の解析
・氷水混相の雲微物理過程に関する多孔性回転楕円体モデルの性能検証と改良
・超水滴法による海洋層積雲のシミュレーションと大気境界層の乱流構造
・東シナ海における総窒素酸化物の輸送と化学的変質に関するモデル解析
・粒子の衝突併合を考慮した噴霧塗装シミュレーション
・超水滴法による海洋層積雲のシミュレーションとエアロゾル影響の評価
・スコールラインのシミュレーションに必要な空間解像度の評価
・再帰的アルゴリズムによる超水滴法の改良
・遺伝的アルゴリズムによる動物将棋の教師なし学習
・神戸市内における花粉の飛散シミュレーション
・対話型進化計算による人の好みの自動抽出
・波力発電シミュレーション
・淡路島における新しい分散電力供給システムの提案
・人の流動に着目した神戸元町商店街の活性化


本研究室で学びたい方へ

博士前期課程への進学を検討されている方へのメッセージです.

研究テーマ・指導方針
「超水滴法に基づく高精度気象モデルの研究開発」とその応用に興味がある学生を優先的に受け入れますが, 広く数値シミュレーションに関わるテーマであれば, みなさんの希望や自主性を重視しサポートします. ただし, 在学期間内に成果がまとまる見込みがあり, 私が指導可能で, かつ修士号に相応しい独自性・新規性があることが必須です. 研究の方向を見定めるのは難しい作業です. テーマによらずぜひ早めにご相談ください.

研究テーマキーワード
・雲エアロゾル相互作用; 温かい雲 (層積雲, 背の低い積雲, など); 冷たい雲 (積乱雲, 巻雲, 飛行機雲, 線状降水帯, など); 地形性の雲 (山を越える時にできる雲), 霧; 集中豪雨; 台風; 雲の中での化学反応; 粒子/雲粒の帯電と雲, 雷; 雲と乱流の相互作用;
・関連する可視化手法の開発 (計算結果をきれいな画像にする); 基礎アルゴリズムの改良・開発 (粒子の分裂計算, 並列計算の高速化, など)
・他惑星の雲; 火山噴煙; 惑星形成
・噴霧解析; ダスト・ミスト; キャビテーション

必要とされる予備知識
力学・熱力学・プログラミングの初歩的知識が最低限必要となります. 流体力学を学んでいるとなお良いです. その他の基礎知識は1年次の前半に勉強します. 英語論文を読む心づもりも必要です. 多くの事前知識は求めませんが, 数式やプログラミングが苦手だと本研究室は向かないと思います.

年次計画例
・1年次前期: 基礎勉強
・1年次後期: 研究テーマ選定, 関連英語文献の勉強
・2年次前期: 研究推進
・2年次後期: 研究まとめ, 学会発表, 修論執筆

基礎勉強例
Linux標準教科書, http://www.lpi.or.jp/linuxtext/text.shtml, など
Fortran90/95プログラミング, 冨田 博之, 齋藤 泰洋, https://www.amazon.co.jp/dp/4563015873
数値計算の常識, 伊理 正夫, 藤野 和建, https://www.amazon.co.jp/dp/4320013433, など
雲の中では何が起こっているのか, 荒木 健太郎, https://www.amazon.co.jp/dp/4860643976
雲と雨の気象学, 水野 量, https://www.amazon.co.jp/dp/4254167032
(一般気象学, 小倉 義光, https://www.amazon.co.jp/dp/4130627252)

想定される進路
本研究室では, 雲モデルに関する世界最先端の研究に携わることができます. 得られた知識は, 流体中に多数の微小な粒子・液滴・気泡が浮かぶ分散系における混相(多相)の流れのシミュレーションに広く応用することができます. また, スパコン上でも使えるような高度なシミュレーションプログラムを自分で作ることができるようになります. このような高い専門性を活かした活躍の場は多方面にわたります. 例えば,
雲物理学・気象学分野における博士後期課程への進学
CAE (Computer Aided Engineering)を活用した製品の設計・開発, あるいはそのコンサルティング
気象サービス, 環境アセスメント


経歴、専門分野、研究内容、研究業績、学外活動など
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