井上 寛康 准教授

社会において観測されるさまざまな現象は,なぜそれが起きたかわからない「複雑さ」を持っています.現象の複雑さの根源は,社会における要素それぞれにあるのではなく,要素の関わりの中にあるといえます.すなわち,複雑さは関係性から立ち現れる性質を持っています.私たちの研究では上記を踏まえて,ネットワークやエージェントモデルをアプローチの道具とし,実際の観測データを用いながら,例えば次のような社会的な現象を捉えようとしています.

1.企業や個人のチームから現れるイノベーション
世界を驚かせるような大発見は,ともすれば一人の天才等に焦点が当てられがちですが,実際にはほとんどの発見やそれに伴う変革(イノベーション)はチームが生み出した成果です.本研究では,どのようなチームがより大きな発見を生み出す可能性があるのかを明らかにし,企業の戦略や国家のイノベーションシステム構築に資することを目的としています.

2.経済活動における倒産や災害などの環境変化の波及と抑制
経済的競争は世界的な規模となり,企業はさらなる変化への対応力を求められていると言えます.結果として企業はより身軽になろうとし,他の企業との取引や協力関係により競争力を確保しています.このような相互に依存している状況は,倒産や災害といった環境の変化が大きな波及効果を生み出し,結果を予測しづらいといえます.本研究では,社会の変化が波及するにはどのような条件が必要なのかを明らかにし,企業の戦略や政策の立案に資することを目的としています.

3.スポーツにおける戦略
サッカーなどの団体スポーツにおいては,個人のスキルとともに組織が重要とされています.しかしながら,スポーツのような動的な状況では再現性が確保されず,客観的に把握しづらいといえます.本研究では,ゲームの中で繰り返し現れるあいまいな定型性を見出すことを通じて,組織が体現している戦略を機械的に明らかにし,そのスポーツの深い理解に資することを目的としています.

研究分野を表すキーワード:ネットワーク科学,エージェントシミュレーション,イノベーションシステム

研究業績など